犬の健康に必要な六大栄養素と理想の配合バランス
犬の健康と成長に必要な栄養素は
- タンパク質
- 炭水化物
- 脂質
の三大栄養素と
- ビタミン
- ミネラル
- 水
を合わせた、いわゆる「六大栄養素」です。これは人間も犬も同じです。
よく「犬の祖先はオオカミであり、もともとは肉しか食べない肉食なのだから肉以外は必要ない」という人もいます。確かに肉中心のごはんにはなるのですが、肉以外がいらないわけではありません。
人間と同じで、犬も住環境の変化に伴い長寿になってきています。それもひとえに、安心安全で栄養バランスの良いドッグフードが増えたからに他なりません。
今回は、犬に必要な六大栄養素について、犬の健康のどのようなことに必要なのかについて詳しくご紹介していきます。
六大栄養素の種類と効果
六大栄養素の中でも、タンパク質・炭水化物・脂質の三大栄養素が特に重要で、健康のための理想的な栄養バランスは「タンパク質:炭水化物:脂質=3:1:1」と言われています。

タンパク質・炭水化物・脂質の三大栄養素が重要。
理想の配合バランスは
「タンパク質:炭水化物:脂質=3:1:1」
タンパク質
筋肉、骨、皮膚、毛、爪、血液、酵素、ホルモンなど、体を構成する組織の生成に必要なのがタンパク質です。人間も犬も、体づくりの基礎となるのはタンパク質です。
また、タンパク質に含まれるアミノ酸も必要です。アミノ酸は、毎日傷ついたり死んだりする細胞を修復して、新しい細胞を作るために必要な成分です。動物は植物と違ってアミノ酸を自ら作り出すことができません。そのため、食事でタンパク質を摂取してアミノ酸を補給するしかありません。
基本的に、タンパク質の多い・少ないによって、成長が必要な幼犬期~成犬期(0歳~10歳くらい)向けなのか、老犬(10歳以降)向けなのかが決まります。
炭水化物
米・小麦・とうもろこしを代表とする炭水化物は犬には必要ない(もしくは犬には害がある)と言われることもありますが、そんなことはありません。適量の炭水化物は犬のエネルギー維持のために必要な成分です。
確かに、小麦・とうもろこしといった原材料は、消化や発酵が遅く炭水化物を十分吸収できません。それらの質の悪い炭水化物はあまり与えるべきではありません。グレインフリー(小麦・とうもろこし不使用)のドッグフードがあるのはそのためです。
しかしながら、豆・サツマイモなどの良質な炭水化物は、体を動かすエネルギー源となり、胃腸の機能を刺激して体の代謝を促します。
これらの良質な原材料から摂取した炭水化物は、体にエネルギーを供給し、エネルギーを貯蔵し、熱を作り出します。元気に体を動かすためには、人間も犬も炭水化物が欠かせないんです。
ただし、炭水化物のとりすぎはエネルギーとして消費しきれずに「脂肪」に変換されて体に蓄積します。脂肪がつき過ぎて体に糖分が溜まると、人間と同じように糖尿病や高血圧などの病気の引き金になってしまうので注意が必要です。
脂肪
脂肪は「中性脂肪」と呼ばれ、人間の場合は中性脂肪の値がメタボの目安になるなど、あまりいいイメージがありませんが、人間でも犬でも適量の脂肪は健康のために必要なものです。
ドッグフードに含まれる脂肪の役割は以下のようなものがあります。
- 食欲を増進させる
犬の食欲は脂肪とタンパク質の量で決まります。
人間と同じで、脂肪のある食材は食欲をそそるニオイになったり口当たりが良くなります。犬はニオイで美味しさを感じるため、脂肪が食欲に与える影響は大きいです。
- ビタミンの吸収を助ける
犬は脂溶性ビタミンを吸収します。ドッグフードに脂肪が含まれることで、脂溶性ビタミンA、D、E、Kの吸収を助けます。
- 脳や網膜を活性化させる脂肪
魚に多く含まれる脂肪酸は、人にも犬にも良いとされていて、特に脳や網膜を活性化させる働きがあります。
魚の他にはエゴマや亜麻仁油など最近流行りの油に含まれています。オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸という言葉を聞いたことがあるでしょうか?体の機能を活性化させて代謝をよくして健康に保つ効果があるとされている脂肪酸です。
- エネルギーの供給
脂肪も炭水化物と同じように、体を動かすためのエネルギー源となります。しかも炭水化物の2倍から3倍のエネルギーがあり、少ない量で1日の必要エネルギーをまかなうことができます。
とはいえ、現実的には脂肪だけでエネルギーをまかなうことは難しく、脂肪の摂取量が吸収量を超えてしまうと、肥満・脂肪便・急性膵炎などの弊害が出てきます。成長期・授乳期や、運動量の多い狩猟犬などは、少し脂肪分が多めのドッグフードが好ましいです。
ビタミン
ビタミンは体の調子を整えるために必要な成分で、ほとんどのドッグフードに含まれています。原材料の素材(りんご、にんじんなど)として配合されることもあれば、そのまま添加されることもあります。
ビタミンは水に溶ける「水溶性ビタミン」、脂に溶ける「脂溶性ビタミン」、ビタミン様物質(ビタミンに似た有機化合物)に分けることができます。
脂溶性ビタミン | |
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ビタミンA | 目、毛、皮膚、歯の健康 |
ビタミンD | カルシウムとリンの吸収を助けて、骨の成長を促す |
ビタミンE | 老化防止、免疫系の機能低下防止 |
ビタミンK | 出血を抑える役割 |
水溶性ビタミン | |
ビタミンB複合体 | 体の中の酵素の働きを助ける |
ビタミンC | 毛並みにツヤを与えて皮膚にハリと弾力を与える。若さを保つために必要 |
ビタミン様物質 | |
L-カルニチン | 脂肪をエネルギーに変換させる働き |
カロテノイド | 抗酸化作用で老化防止。緑黄色野菜に含まれる |
フラボノイド | 抗酸化作用で老化防止。色が鮮やかな野菜に多く含まれる |
ミネラル
ミネラルは食材に含まれる無機物(無機成分)のことです。
ミネラルは、単独で何かの効果があるというよりも、お互いの成分の相互作用で働く効果の方が大きく、単にドッグフードにミネラルを配合すればいいというものではありません。
犬の体に必要なミネラルは以下のとおりです。

カルシウム、リン、マグネシウム、カリウム、ナトリウム、塩素、鉄、亜鉛、銅、マンガン、ヨウ素
カルシウム
骨を形成するだけでなく、心臓を動かすなど様々な働きに必要です。
リン
カルシウムと作用して骨や歯を形成します。肉などに多く含まれますが、多く与えすぎてもカルシウム欠乏症になることがあります。
マグネシウム
タンパク質の合成、エネルギー代謝、筋肉収縮、体温調節など、様々な調節機能に作用します。
カリウム、ナトリウム、塩素
電解質(イオン)とも呼ばれます。水に溶けて電気信号となり、細胞の浸透圧を調節したり、細胞の信号を伝達する働きがあります。不足すると、脱水症状、震え、攣りなど症状が見られます。ひどくなると、痙攣、極度の疲労状態でぐったりした状態になってしまいます。
鉄
血液中のヘモグロビンを生成します。不足すると貧血などの症状が見られます。
亜鉛
亜鉛は皮膚の状態を保つなどの生理機能に作用します。犬種的にシベリアンハスキーなどは亜鉛の吸収が悪く欠乏症になりやすいです。ドッグフードのパッケージでは亜鉛の含有量がわからないため、獣医と相談して必要ならサプリで補う必要があります。
銅
銅は赤血球の機能に関係します。赤血球の赤い色は銅の色です。ベドリントンテリアやウエストハイランドホワイトテリアは銅を排出しづらい体質で、摂取しすぎると肝硬変になる場合があります。
マンガン
酵素の働きを助けます。
ヨウ素
甲状腺ホルモンを生成する成分です。甲状腺ホルモンは発育、成長、新陳代謝などに影響します。ヨウ素が不足すると疲れやすくなるため、犬が常に元気がなくてぐったりしているような状態になります。
水
水は犬が生きていくうえでは最も重要な栄養素です。
栄養素として見落とされがちですが、生きていくために水が必要なのは人間も犬も一緒ですね。
人間も犬も多くの水分で構成されています。脂肪やタンパク質などの栄養は多少不足しても生きていけますが、水は体内の15%が失われただけでも死んでしまいます。そのため、何がなくても「水」だけは生き延びるために重要なんです。
ですが、水を飲ませるときも実は注意が必要になります。
水の詳細については以下のページで詳しくまとめてあります。犬を飼う上で気をつけなければならないこともあるので、ぜひ読んでみてください。
理想的な配合バランス
犬の健康に最も理想的な配合バランスは「タンパク質:炭水化物:脂質=3:1:1」です。
各成分の配合割合については、ドッグフードに必ず明記されています。もし明記されていないようなドッグフードがあるときは、購入はおすすめしません。
基本的には3:1:1なのですが、犬の年齢(ステージ)によって若干異なります。
幼犬期(0歳~1歳)
幼犬期(0歳~1歳)は、エネルギーをたくさん使う時期で、体の成長に必要な成分が必要な時期でもあります。そのため、タンパク質(体づくり)と脂質(エネルギー)がやや多めのドッグフードが理想的です。
成犬期(1歳~10歳)
成犬期(1歳~10歳)の割合は、まさに「タンパク質:炭水化物:脂質=3:1:1」です。ただし、10歳に近づくにつれてエネルギーをそれほど必要としなくなるので、脂質の量は控えめのドッグフードの方がいいでしょう。
老犬期(10歳以降)
老犬期(10歳以降)はエネルギーの代謝が悪くなり運動量も減ってきます。そのため、エネルギーとなる脂質はあまり必要ありません。脂質が多すぎると肥満や病気の原因にもなってしまうので注意しましょう。
ステージごとの配合バランスをまとめましたが、それほどシビアに考える必要はありません。バランスの基本「3:1:1」に近ければそれがベストです。
ただし、10歳を過ぎた老犬に幼犬(0歳~1歳)用のドッグフードを与えるようなことは避けましょう。
使っている食材の安全性・品質・理想的な配合バランスを実現したドッグフードについては、以下のページでご紹介しています。ワンちゃんの健康を考えてドッグフードをたべさせたい人は、ぜひ合わせて読んでみてください。